Group Exhibition

場所: 新宿座ギャラリー(web)
日時: 2014年4月22日(火)〜5月4日(日)
参加作家: 加藤貴文・川村元紀・玉野大介・百頭たけし・ぼく脳
イベント: オープニングパーティ:4月22日(火)17:00-(参加費500円、1drink付き)
トークライブ"ぼく脳×小林銅蟲 超無意味大喜利2「お無見」":4月26日 13:00-15:00 (参加費1000円)
※トークライブ中は鑑賞できない作品もありますので、お時間にご注意の上ご来場ください。
この度、加藤貴文・川村元紀・玉野大介・百頭たけし・ぼく脳の5名によるグループ展「ネタ・メタ・サジタリウス」を開催致します。
5人の表現はそれぞれ違った媒体を用いてはいますが、ユーモアを湛えた作品であるというところに共通項があります。
「芸術とユーモア」というと、風刺的な攻撃性を持ったものや、逸脱・誇張などを表現した衝撃的なものも多くあります。彼らのユーモアはそういったものからは距離を置き、物事を俯瞰的に観察し少しだけ位相をずらすような静穏なものです。しかしその眼差しは物事の有り様を根底から問いかける鋭いものであり、射手座の矢のように引き絞った形で空から世界へ向けられているのです。
ネタとは、ユーモアを生む為の「種」が転じたものであり、エッセンスであると同時にユーモア以前のものであります。この展示が種となり、それぞれの生活の中でそれぞれのユーモアが萌芽する瞬間があることを願っています。
川村元紀(本展企画者)

「ネタ・メタ・サジタリウス」展に寄せて

前田裕哉
 「ネタ」や「メタ」という言葉は近年のSNSの流行と定着によってもたらされたコミュニケーション環境の変容を説明するときに使われることが多い。概してそれはコミュニケーション環境自体に対して破壊的に作用するとされる――ネット上のある発言が炎上した際に「いやあれはネタだから」と返すという、ごくありふれた風景を思い起こすとよい――がゆえに、往々にして否定的な文脈で用いられるものであるが、このようなコミュニケーション可能性/不可能性という文脈とは違った角度から「ネタ」や「メタ」を俎上にのせることはできないだろうか。
 このときに参考になるのが、フロイトの考察である。彼は「ヒューモア」という文章において、ヒューモア(ユーモア)とは自我における苦痛に対して超自我においてそれは何でもないことだと励ますことであると定義している。このように、自我/超自我という文脈に置き直すことによって、「笑い」に対して、人間固有の感情表現というような定義とは異なる角度から考え直すことができるだろう。フロイトにおけるヒューモアは「超自我」=「メタ」とのかかわりにおいて定義される精神的態度であるとされるのだが、しかし生身の人間がそのままで超自我になることはできない以上、上記の定義は人に一人二役を強いることになり、それゆえそれ自体が一種の笑いとして提示されることになるだろう。対象と同じレベルに立ってそれを笑うようなお笑いではなく、生きながらメタ的領域に触れてしまったがゆえに生じる笑いという位相が確実に存在することが、ここで示唆されているのである。
 そしてこのような状況においては、世界は端的にコメディとして立ち現われてくることになる。コメディとは言うまでもなく機知や超展開によって、私たちが日常生活を営む上で前提にしているコミュニケーション環境が(部分的にせよ)壊れた状態≒なんでもありな状態を描くものであるが、上で瞥見したヒューモア論から考えてみると、見て笑えるだけがコメディではなく、なんでもありな世界=(逆)ユートピア状態を描くこと、もしくはそういう存在になること、それもまたコメディであると言えるだろう。「ネタ」と「メタ」をこのような地点において出会わせること――今回の出展作家では玉野大介氏の絵画作品や百頭たけし氏の写真作品に、そのような要素が如実に現われている。
 ところでドゥルーズは『差異と反復』において、《空間を充たすこと、空間を分配することは、空間を分割することとは、まったく違っている。それは生物に遍歴を配分することであり、生物に錯乱を配分することである》と書いている。超自我=「メタ」の領域と結びつけられたなんでもありな(逆)ユートピアにおいて作品を作り続けることとは、メタ的な位相から配分された遍歴と錯乱をネタとし、天上の星々や星座――日本や中国では、長らく社会に対する不穏さの象徴であった――に向かうようにしてコミュニケーション環境を踏み外すことにほかならない。

参加作家

加藤貴文 1983 生まれ
2009 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了
>website
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川村元紀 1984 生まれ
2008 金沢美術工芸大学油画専攻卒業
2010 個展『SPACE/DEBRIS/CLOUD』(Kapo gallery/石川)
>website 2011 二人展『取手到達不能極2-5-5』(Conflictable cube/茨城)
>twitter 2012 マンスリー自宅展『Only One "IRRUSION"』(亀有DNH/東京)以後毎月自宅展を開催。
グループ展『AREA55』(SugerSaltCafe/千葉)
2013 二人展『ハルトシュラ mental sketch modified -Jimin Chun /川村元紀展-』(CAS/大阪)
『北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI -交錯する現在-』(コーポ北加賀屋/大阪)(Gallery MoMo Projects & CASHI /東京)
2014 個展『ルシオラの居る』(ギャラリー新宿座/東京)

玉野大介 1961 生まれ
1985 早稲田大学法学部中退
>website 2002 ターナーアクリルアワード大賞受賞
>twitter 2002 リキテックスビエンナーレ、ヒロ杉山賞受賞
2003 個展(パルスギャラリー/東京)
2007 個展(マルギャラリー/東京)
2008 市場大介企画「ジャパンパラノイア展」(ルモントアンレア/パリ)
2009 個展(unseal contemporary/東京)
2010 個展(unseal contemporary/東京)

百頭たけし 1980 生まれ
2010 「帰ってきた なぜ、怪獣図鑑か展」(サイトー美術館)
>website 2012 「心霊写真」(22:00ギャラリー/東京)
>twitter 「ラッセン展」(CASHI/東京)
2013 「であ・しゅとぅるむ」( 名古屋市民ギャラリー矢田/愛知)
「北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI -交錯する現在-」(コーポ北加賀屋/大阪)(Gallery MoMo Projects & CASHI /東京)

ぼく脳 芸人。各所でライブ活動などをする傍ら、Twitterなどに漫画やイラストなどを投稿。ポータルサイトgooで漫画連載など。
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>twitter

ギャラリー新宿座

東京都新宿区新宿4-4-15
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